アユバイター鮎「大量飯店でデキる女」の巻

 ■ アユバイター鮎 『大量販店でデキる女』の巻 2012/5/1(Tue)

 

 

 

 

大学生の時


毎週土曜日と日曜日


有名な大量販店の本店で


フィルム販売のアルバイトをしていた。



カメラやその他電化製品を買いに


外国人の人が多く訪れる店で


常にものすごい人で賑わっていた。




私は店の入り口の店頭でフィルムの販売をしていたので


しょっちゅう外国人の方に


道を聞かれたり


電話番号を聞かれたり



それはそれは忙しかった。




外国人の人によく聞かれるのは



たいてい「郵便局はどこですか?」なので



「真っ直ぐ行って最初の角を右にまがってしばらく行くと郵便局がありますよ」



と、すらすらと英語で答えられるようになっていた。



そうなると、



「あなた英語話せるんですね?」



と、急に相手はペラペラと英語で話し出す。





「いいえ、ほとんど話せません」と言うと




「それなら私が英語教えてあげますから」



と、電話番号の交換を求められたりする。




そういった時、



どういう風に断れば感じ悪くないんだろう?



バイトから帰宅すると、父に




「英語でこういう場合はどう回答すればいいの?」



など、教えてもらっていた。





父の仕事は、外人との取り引きが主で



頻繁に海外に行き、あるものを売りさばく仕事をしていた。




その頃、母は



金の運び屋をしていた。






わかりやすく言うと



父は貿易関係、


母は金歯を歯科医に届ける仕事をしていた。






父は英語がペラペラなのに


私は英語がさっぱりダメだ。




けれど、カッコよく喋りたい私は


ネーテブに聞えるように話すにはどう発音すればいいかなど


真剣に父に聞いて喋る練習をした。




単に、カッコ良く思われたいからだけのために。




外国人の人に



「このメーカーの○○はどこにありますか?」



など、商品売り場を質問されるのも想定内だったので、



あらかじめ父に聞いておき英語で答えられるようにしていた。




「あなたの探している○○のメーカーの○○は地下一階にあります」



とか



「そちらのエレベーターを上がると2階の右側にあります」




などと、なめらかな英語で



商品の場所など説明ができたので




「あなた、とても英語上手で発音もすごく綺麗です」



と、誉めてもらえたりした。



まさにデキる女だった。




だが、想定外の質問や想定外のことを聞かれると



あらかじめ用意していた回答ができなくて



ちんぷんかんぷんでパニックになり



しどろもどろになってもごもごあたふたして



それはそれはカッコ悪かった。






また、ある時、


いつものようにバイトに行くと


なにやら、社員がバタバタと目の前を走っていく。



なんだ?と思って見ていたら



少しすると外から戻ってきて店内に入り


次に、その社員と、もう二人社員が一緒に


又 目の前をドタバタと走っていった。




どうやら店の壁沿いの”駐車してはいけない”場所に


お客さんが車を止めたらしく


社員がお客さんから車のキーを借りて


車を移動させようとしていたらしかった。




けれど、3人の社員は


その車に入ったり出たりを繰り返して


バタバタしているだけで


車はいっこうに動く気配がない。




どうしたんだろう?と思って声をかけてみた。




「どうしたんですか?」




社員A「このお客さんの車、ここから移動させないといけないんだけどマニュアル車なんだよ」



社員B「オレもマニュアル車はもうずっと運転してないし、この車すっごいデカかいし高級車だし・・」



社員C「俺オートマしか運転したことないから無理なんだよね」




と、3人とも情けなさそうな顔をして


車を前に立ち尽くしていた。





「あの・・わたし、動かしましょうか?」




そう私が言うと




「え!?マニュアル車、運転できるの!?」




と 驚いた顔で3人の社員が私を見た。




「私が乗ってる車、マニュアル車ですから。」




そして高級車のキーを受け取ると運転席に座り



パワーウィンドーの窓をスーっと開けた私は



さりげなく窓の所にヒジをかけ



髪の毛をかきあげながら



「どこに移動させればいいんですか?」



と、突っ立っている男3人に聞いた。




「そこの角を曲がって電柱の先あたりに止めておいてもらえますか?お願いします。」



と、年下のアルバイトの私に対して敬語になっていた。




私が車を移動させて戻ってくると




「どうもありがとうございました!」



と、男3人は私に頭を下げていた。





「また困ったらいつでも声かけてくださいね」



と、お客さんの高級車のキーを社員に手渡しながら



ウィンクとかしてしまいそうな気持ちをおさえて微笑んだ。






デキる女になった気がしていた。




単に マニュアル車を数メートル動かしただけなのに。





ちなみに


今はもうずっとオートマ車なので


マニュアル車の運転なんてできない。



坂道発進でズリズリ下がっていく自分が目に浮かぶ。





カメラやその他電化製品を買いに


外国人の人が多く訪れる店で


常にものすごい人で賑わっていた。




私は店の入り口の店頭でフィルムの販売をしていたので


しょっちゅう外国人の方に


道を聞かれたり


電話番号を聞かれたり



それはそれは忙しかった。




外国人の人によく聞かれるのは



たいてい「郵便局はどこですか?」なので



「真っ直ぐ行って最初の角を右にまがってしばらく行くと郵便局がありますよ」



と、すらすらと英語で答えられるようになっていた。



そうなると、



「あなた英語話せるんですね?」



と、急に相手はペラペラと英語で話し出す。





「いいえ、ほとんど話せません」と言うと




「それなら私が英語教えてあげますから」



と、電話番号の交換を求められたりする。




そういった時、



どういう風に断れば感じ悪くないんだろう?



バイトから帰宅すると、父に




「英語でこういう場合はどう回答すればいいの?」



など、教えてもらっていた。





父の仕事は、外人との取り引きが主で



頻繁に海外に行き、あるものを売りさばく仕事をしていた。




その頃、母は



金の運び屋をしていた。






わかりやすく言うと



父は貿易関係、


母は金歯を歯科医に届ける仕事をしていた。






父は英語がペラペラなのに


私は英語がさっぱりダメだ。




けれど、カッコよく喋りたい私は


ネーテブに聞えるように話すにはどう発音すればいいかなど


真剣に父に聞いて喋る練習をした。




単に、カッコ良く思われたいからだけのために。




外国人の人に



「このメーカーの○○はどこにありますか?」



など、商品売り場を質問されるのも想定内だったので、



あらかじめ父に聞いておき英語で答えられるようにしていた。




「あなたの探している○○のメーカーの○○は地下一階にあります」



とか



「そちらのエレベーターを上がると2階の右側にあります」




などと、なめらかな英語で



商品の場所など説明ができたので




「あなた、とても英語上手で発音もすごく綺麗です」



と、誉めてもらえたりした。



まさにデキる女だった。




だが、想定外の質問や想定外のことを聞かれると



あらかじめ用意していた回答ができなくて



ちんぷんかんぷんでパニックになり



しどろもどろになってもごもごあたふたして



それはそれはカッコ悪かった。






また、ある時、


いつものようにバイトに行くと


なにやら、社員がバタバタと目の前を走っていく。



なんだ?と思って見ていたら



少しすると外から戻ってきて店内に入り


次に、その社員と、もう二人社員が一緒に


又 目の前をドタバタと走っていった。




どうやら店の壁沿いの”駐車してはいけない”場所に


お客さんが車を止めたらしく


社員がお客さんから車のキーを借りて


車を移動させようとしていたらしかった。




けれど、3人の社員は


その車に入ったり出たりを繰り返して


バタバタしているだけで


車はいっこうに動く気配がない。




どうしたんだろう?と思って声をかけてみた。




「どうしたんですか?」




社員A「このお客さんの車、ここから移動させないといけないんだけどマニュアル車なんだよ」



社員B「オレもマニュアル車はもうずっと運転してないし、この車すっごいデカかいし高級車だし・・」



社員C「俺オートマしか運転したことないから無理なんだよね」




と、3人とも情けなさそうな顔をして


車を前に立ち尽くしていた。





「あの・・わたし、動かしましょうか?」




そう私が言うと




「え!?マニュアル車、運転できるの!?」




と 驚いた顔で3人の社員が私を見た。




「私が乗ってる車、マニュアル車ですから。」




そして高級車のキーを受け取ると運転席に座り



パワーウィンドーの窓をスーっと開けた私は



さりげなく窓の所にヒジをかけ



髪の毛をかきあげながら



「どこに移動させればいいんですか?」



と、突っ立っている男3人に聞いた。




「そこの角を曲がって電柱の先あたりに止めておいてもらえますか?お願いします。」



と、年下のアルバイトの私 対して敬語になっていた。




私が車を移動させて戻ってくると




「どうもありがとうございました!」



と、男3人は私に頭を下げていた。





「また困ったらいつでも声かけてくださいね」



と、お客さんの高級車のキーを社員に手渡しながら



ウィンクとかしてしまいそうな気持ちをおさえて微笑んだ。






デキる女になった気がしていた。




単に マニュアル車を数メートル動かしただけなのに。





ちなみに


今はもうずっとオートマ車なので


マニュアル車の運転なんてできない。



坂道発進でズリズリ下がっていく自分が目に浮かぶ。