船上のパーティー


■ 船上のパーティー 2004/1/22(Thu)



母と仲好しのおば様がご近所にいる。


あるときそのおば様が家に遊びにきた。




「今度うちの息子の大学でパーティーがあるのだけど鮎ちゃん、よかったら参加してもらえないかしら」


というお誘いだった。



パーティーなんて出たことがない。



どうしよう・・


と悩んでいたら、母が「オッケ~オッケ~」と即答していた。





それは横浜で開催された。


船の上のパーティーだった。




駅に着くと改札を出たところに紺色のロングコートを着た背の高い男性が立っていた。



「よく来てくれたね。ありがとう。」



ニッコリ笑う彼の白い歯が眩しかった。



船につくまで少しの道のりを歩いたが 風が強く私は緊張と寒さで震えていた。





「寒くない?」



「いえ・・大丈夫です」



と私が言い終わらないうちに彼は自分のコートを脱ぎ私の肩にはおらせてくれていた。



「ありがとうございます。」



私はペコペコおじぎをすると履き慣れないハイヒールの靴で足首をガクガクいわせながらヨタヨタと歩いていた。


夜の海にライティングされた大きな船が静かに浮かんでいる。


船に乗るのも初めてな私は夢を見ているような気分だった。





彼が手を差し出してくれたのでその手につかまり船上に向った。



船の中のホールでは優雅な音楽が流れており、ほの暗い室内に男性たちの白い手袋が光っていた。




なんだ?この白い手袋は?なんかの儀式か?!



どうやら今日のパーティーはダンスパーティーらしく、男性は全員白い手袋をはめていた。



「踊れなくても全然大丈夫だからね。皆が優しく教えてくれるから。踊ってくださいってたくさん来るかもしれないけど、そしたらいろいろな人と踊ってみてね」



祐樹さん(近所のおば様の息子さんのお名前)は、そう言うと私にジュースを持ってきてくれる為に私のそばを離れた。




するとすぐに知らない男性が私の目の前に来て右手を差し出した。




「よろしかったら踊っていただけませんか?」



「え・・はい・・でも踊れないです・・」



「大丈夫ですよ。僕が教えてあげますから」



私はオロオロしながらもその男性に手をひかれホールの中心に連れていかれた。



少し速いテンポの軽快な音楽が流れる。



「僕の動かすように足を動かしてください。簡単ですから」




彼はそう言うと私にダンスを教えてくれた。



なんだ?この人のへっぴり腰は?しかもリズムにあってないし・・う~おかしい!笑いたい!!!!




一曲踊り終わると私を元の位置に戻してくれた。


おかしさから開放されてほっとした。





「踊ってきたけど・・でもぜんぜん上手く踊れなかった・・・」



と、私はジュースを持ってきてくれた祐樹さんに伝えた。





「僕は1年生だから先輩たちには逆らえないからさ、踊らせろとたくさん先輩達が来るかもしれないけど、そしたら踊ってあげてね」



祐樹さんは頭をかきながら照れくさそうに微笑んだ。




また少しすると3年生らしき男性が私たちの前にやってきた。



「佐々木、いいか?彼女かりても。」



「あ、山川先輩。どうぞ。かまいません。」



そして山川先輩は私の方を向き



「よかったら踊ってもらえますか?」



とキラキラ輝いたアニメのような目で私を見て言った。


とっても優しそうな瞳だった。




私の手をひき山川先輩は踊り始めた。



ゆったりとしたテンポの音楽が流れる。



彼の手が私の腰を自分の方にひき寄せた。




うぅわっ・・ち、近い・・



抱き合ってるみたいだぁ・・きゃぁぁ~~(*v.v)ぽ 




と心の中で嬉しいような恥かしいような意味不明な叫び声をあげていた。




「佐々木の彼女なんですか?」




山川先輩の優しい声が耳元で響いた。




「い、いいえ、彼のお母様に頼まれて、うちの近所なだけで、彼とか彼女とか・・そういうのとは違くて・・・・」




と、私がモゴモゴ言ってると




「なら俺が君を彼女としてさらってもいいわけだね」



と言いながらクスッと彼が笑った。



白い歯が見えた。



真面目でウブ(死語)な高校生だった私は、


真っ赤になってただ下を向いてしまった。




そして私は次々に祐樹さんの先輩達に手をひかれてはホールに連れ出され、パーティーが終わる頃にはけっこう踊れるようになっていた。





~今日のラストダンスです~





と場内に放送が流れた。




そしてようやく私の本来のパートナー(祐樹さん)の元に戻った私は最後に一曲だけやっと彼と踊ることが出来た。




「今日はありがとう。休む暇なかったみたいだね。疲れなかった?」



「いいえ。大丈夫。上手に踊れなかったけどみんな優しくて丁寧に教えてくれたから」




ぎこちない会話をしながらゆくりとステップを踏んでいた。




そして帰りは家の前まで送り届けてくれて私の母に挨拶をし彼は去っていった。





そしてその翌年も その大学主催のパーティーが開催された。




そして又祐樹さんにお願いされた。




「今度は誰か友達も連れてきてもらえるかなぁ。僕の友達が踊る時のパートナーがいなくてね。誰か友達お願いできないかな」




そう頼まれた私は




「なら、かわいい子を連れて行きますね」




「鮎ちゃんよりもかわいい子?」



少し笑いながら祐樹さんが言った。





「うん。そう。私よりも可愛い子を連れて行くね。ふふふ」





そう答えた私は次のパーティーには中学からの友達の紘子を連れて行くことにした。




彼女は中学の時にはまるまる太っていたのだが、



夏にアイスクリームやジュースの暴飲暴食でおなかを壊し、


夏休みの1ヶ月で7キロ減量したのだ。



目鼻がほっぺたに埋まっていたはずの彼女の目鼻はくっきりと出現し、



ものすごい可愛く華奢な美少女にかわっていた。(嫉妬・・・)





当然私がその方法を試さないわけがない。




その減量法?を聞いた私は翌日からアイスクリームにジュースを飲み食いし、



私は1ヶ月であっという間に




5キロ太っていた・・・




なんでやねん・・・・(○`ε´○) ・・・・





私の胃腸は普通の人より数倍強かったのだ。




おなかは全く壊れなかった・・・




食べたアイスと甘いジュースが全て脂肪となり、みごと5キロ太った私は、


華麗に変身した華奢な紘子を連れてパーティーへ出かけた。




今回のパーティーは都心の某ホテルで開催された。





「パーティーなんて行った事ないから洋服とかもないわ・・・」




という紘子の為に、私のお気に入りだが少々丈が短いので殆ど着ていなかった 真っ白いワンピース を貸してあげた。





真っ白な私のワンピースは華奢で華麗な可愛い紘子にとっても似合っていた。





そしてパーティー会場に着くと祐樹さんとその友達が私たちを待っていた。



私たちを見つけると祐樹さんが私に小さな声で囁いた。




「鮎ちゃんて、本当にいい子なんだね。」




「え?なんで?」




「普通はさ、可愛い子連れてくるねって言っても、たいていは



自分より可愛くない子を選んで連れて来るものだろ?



でも鮎ちゃんは、本当に自分より可愛い子連れてきてくれたからさ」






( ̄□ ̄|||)がーーん!





紘子を紹介してあげたドビン似のデブな青年もとっても嬉しそうだった。




心の中でムカってきながらも




「そうでしょ?紘子可愛いでしょう?感謝してよね~・・・」





と頬をヒクヒクさせながら作り笑顔で答えていた。




そしてその日のパーティーでは、


祐樹さんの先輩で前回ダンスを一緒に踊った 


目がキラキラの山川先輩と再び出会い、


その後、少し大人のデートをすることになるのだが、



その話は又この次に♪





~~~次回予告~~~~


『山川先輩と いわゆる銀ブラ(銀座ぶらり旅)』