■ 初恋 -First Kiss- 2003/5/8(Thu)
大学生になったばかりの18歳の夏の終わりだった。
中学生のときから仲の良かった友達の良美と2人で海へでかけた。
毎年家族で行っている知りあいの葉山の保養所なら安心だからと
両親も泊まりでの旅行を許してくれた。
友達と二人で行く初めての旅行にウキウキしていた。
保養所といってもホテル並のきれいさで、その建物は海に面した場所にあるので
3階のラウンジからは海が一面に見渡せる。
天井までの高さのガラス窓が海側全部にはめ込まれていて葉山の海が一望できた。
2階にはレストランがありそこで食事をするのだがそこには学生のバイトの男の子たちが
毎年夏の期間だけアルバイトにきているらしかった。
セルフサービスなのでトレーをさげるときに
「ご馳走様~」と言うと
「ありがとうございましたぁ~!」
とものすごく元気で威勢のいい声がかえってきた。
翌朝も少し眠そうな顔をした彼らがそこにいた。
昼間は海へは出かけず殆ど保養所のプールで遊んでいた。
その日夕食を終えた後、友達と夜の海へ散歩にでかけた。
8月の終わりの海はとても静かだった。
遠くに明かりがチカチカ見えるだけでどこまでが海なのかどこからが空なのか
わからないほど真っ暗で波の音だけが聞こえていた。
すぐそばで花火をやっている家族がいた。
ロケット花火が打ち上げられ「ヒュ~-・・」と何度も音がしていた。
友人と砂浜を歩きながら風にあたっていたが少し肌寒くなったので部屋に戻る事にした。
部屋に戻る途中にバイトの男の子達二人と廊下でばったり出会った。
「こんばんは~」
と元気よく彼らは挨拶してくれた。
「こんばんは」
わたしたちもニコやかに挨拶した。
「どこから来たんですか?」
と色黒の華奢な感じの男の子が私たちに聞いた。
「東京からです」
と良美が答えた。
「いつまでいられるの?」
と背の高い涼しい顔立ちのもうひとりの彼の問いかけに
「明日帰るんです」
と今度は私が答えた。
二言三言会話をしたが、それから私と良美は部屋に戻り一緒に広い大浴場に出かけた。
良美より先にお風呂からあがって部屋に戻ってきた私は途中で買ってきた缶ジュースを飲んでいた。
良美がなかなか戻ってこない・・・
どうしたのかと気にしていると部屋をノックする音。
「ごめん~遅くなっちゃった。あのね。今そこでさっきの彼に逢ったのね。
ほら、あの色が黒い華奢なカッコイイ彼。
で、部屋に遊びにおいでよっていうからちょっと行ってくるね~」
と嬉しそうな顔の良美がいた。
へ!?部屋に遊びに行ってくるだとぉ~!?男の子の部屋に?
良美は今までもボーイフレンドが何人かいたので男の子とも気軽に会話ができるのだ。
それにひきかえ私は
男性が目の前に現れるとモジモジおろおろして挙動不審気味でカッコ悪い・・
良美も中学から女子校だったのになんでこんなにも私と違うのだろう・・
「そ、そっかぁ。気をつけてね。」
良美を見送ったあと私は部屋の窓から海を眺めていた。
窓を全開にして風をうけながら暗くて見えないけれどそこに広がっているであろう海を感じていた。
海の匂いがする。海の音がきこえる。海は大好きだ。
夜の海は昼間の海のように明るくにぎやかではない。
夜の海は何かを言いたげなのにすごく静かだ。
海って・・・・
そんなところが自分に似ている気がする。 なんちゃってw
ぼ~っと海を眺めていると突然ドアをノックする音が聞こえた。
もう戻ってきたんだ。良美。
そう思って勢いよくドアを開けるとそこにはさっき話した背の高い涼しい顔立ちの彼が立っていた。
「こんばんは。突然ごめんね。今、平気?」
平気って・・・なにがヘイキ?って聞いているのだろう???
「え、っとぉ・・平気・・って・・何が?」
次の瞬間私は彼に素直に聞き返していた。
彼には私がずいぶんきょどってる(意味:挙動不審っぽい)ように見えただろうな・・
「時間あるかな。よかったら今から海に散歩に行かない?」
爽やかな笑顔で彼は私に話し掛けている。真っ白な歯が眩しかった。
「で、でも良美が戻ってくるから・・・」私はきょどったまま答えると
「当分彼女はもどってこないよ。俺の友達の部屋で話してるみたいだから」
そう言うと彼は私の手をとり部屋の外へさりげなくひっぱり出そうとした。
しかし、普通の女子の平均サイズの身長と体重とは違う私なのでちょっとやそっとじゃ動かない。
多少ひっぱられてもびくともしないのだ。
だがしかし私の中でちょっとヨレってしたほうが弱々しい女の子っぽくて可愛いぞ、と
自分の中のもうひとりの鮎が指示をだしたので、
少々わざとらしくヨレっとなって部屋の外に出た。
そして彼に連れられ夜の海へ散歩にでかけた。
ロビーを出ると裏からすぐに海辺に出られる。
時間はすでに夜の10時半をまわっていた。
さっきまで花火をしていた家族たちの姿も消え、人影はなく海はただひたすら静かだった。
2人でしばらく歩いているとボート乗り場があった。
ボートが伏せられて何台も並んでいる。
屋根がついたボート受付場所のようなところにベンチがあった。
「座ろうか」
彼が私の方をチラっと見てつぶやいた。
「ええ」
(↑注:この「ええ」は「ええ~っ!?」ってビックリした方でなくうなずいて返事した方の「ええ」)
ベンチに2人で並んで座った。
私はドキドキしていた。
このロマンチックなシュチュエーションと爽やかな青年に既に酔っていたのだ。
これが恋?かしら・・・・
風が長い私の髪をなでていきサラサラとゆれる。
目の前は海。人は誰もいない。
聞こえるのは波の音だけ・・・・
彼の手が私の肩を引き寄せた。
全身の力が抜けタコになった気がした。イカでもいい・・
ともかくグニャって力が抜けてベンチから滑り落ちそうになったのだ。
彼はもう一度私の肩をしっかりつかむとぐっと引き寄せて
そして・・・・
ここからは絵文字とダンスでお楽しみください
(* ・・*) (* ̄・ ̄*)ンー…・・・(*v.v)ぽ・・・・ ・・・
(/-\)いやーん(〃∇〃) てれっ☆(*/∇\*)
┌(・。・)┘♪└(・。・)┐♪┌(・。・)┘
@&%&&’’’‘*‘QW@&’&#IOP)'"&#'*`WJ#$∞∞%※@@@$&%!
これが私の初恋です。
前回のタイムマシーンをお読みになった方は
初恋はこれじゃないだろう?!と言うかもしれませんが、
そういうことにしておいてw
そしてその後、海から都会に戻ってからも彼と会うことになったのだが、
病院での再会となった。
彼は結核で入院したのだ。
彼を好きになってしまった私は結核がうつるかもしれない病気だと知っていながら
病院の非常階段のところで熱いゼッケン(なんか似てる言葉で誤魔化そうと思ったが無理があるかな・・
接吻をしたのだった。
それから病室に戻り、彼のためにブルーのツルツルした光ったサテンの布で作ったレースフリフリのハート型のクッションを渡した。
今思うと、使い用がないクッションだったな。
サテンの生地はツルツルしてて頭のせてもツルンって滑るし
腰に敷いてもツルンと滑るし
クッションの役目を果たさないしょーもないものだった。
そのクッションを真っ赤なサテンのリボンで飾り綺麗な包装紙で包み、
可愛いラッピングを自分でした。
せっかくのラッピングを無雑作にビリビリと破った彼は
私があげたクッションをポンポン上にほうり投げながら
「今度さぁ、ひとりで来ないで友達とかいろんな女の子連れきてよ。
入院退屈なんだよね~」
と言った。
それでも私は翌週も彼のお見舞いにひとりで出かけた。
その後、彼から一通の手紙がきた。
その内容は・・
――― もっと風にふかれてみましょうよ ―――――
彼に夢中になってしまった私のことが負担になったのだろう。
いろいろな人と出会い、もっと多くの人を知るために風にふかれてみろ。という内容の手紙だった。
・・・なんだばかやろ・・
(心の中でつぶやいた・・)
まだまだ男を見る目がないな・・・・
負けないぞ!
私のことをちゃんと思ってくれる人に出会うまでくじけないぞ!
それから毎年夏になると自分の恋人探しの旅にでる鮎であった。
しばらくは結核になってないかとしばらく不安だったが、うつってなかったので安心した。
そして翌年の夏の終わりに
またこのときと同じ葉山で
同じこの海で、
恋をした・・・・・
次回予告編「年下の恋人」(仮題)をお送りする予定です。
おったのしみにっ♪
なお、次回も恥ずかしい部分は顔文字又はダンスになる予定なのでご了承ください。
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